2011年08月11日

ほぼ同業者として。

【津波5人死亡事故、幼稚園を提訴=警報後沿岸へ、安全配慮怠る―仙台地裁】(時事通信)
 東日本大震災の直後、宮城県石巻市の私立日和幼稚園の送迎バスが沿岸部へ向かい、津波に巻き込まれて園児5人が死亡した事故で、5人のうち4人の遺族が10日、幼稚園側の対応に問題があったとして、同園を運営する学校法人「長谷川学院」と当時の園長を相手に、慰謝料など計約2億7000万円を求める訴訟を仙台地裁に起こした。
 提訴したのは、園児4人の両親8人。訴状では、同園は大津波警報が出ていたにもかかわらず、安全配慮義務を怠り、園児をバスで沿岸部に連れて行ったほか、大地震の際は保護者に引き渡すまで園児を園内に待機させるというマニュアルも守られなかったとしている。
 原告側弁護士によると、遺族らは当初和解を求めたが、園側が「予見、回避ともに可能性はなかった」と責任を認めなかったため、提訴に踏み切ったという。(以上転載)



SNSにて本件関連の日記やコメントに目を通してきましたが、「金目当て」「モンペ」「何でも人のせい」などと言う罵詈雑言や、「結果論」「非常時だからしかたない」「悪意はない」などと言う幼稚園擁護が目立ちました。

簡単に捕捉をしておきますが、亡くなった児童5人のうち1人のご家族は津波で全員亡くなっていますので、たとえ提訴したくてもできません。「マトモなのは1人だけ」などと言った誹謗中傷も見られましたが、的外れこの上ありません。また、幼稚園側は事故直後に遺族への説明会は開いたものの「どうやっても回避できなかったので責任はない」として、その後少しずつ事実が明らかになってきた際にも「3月末で園長は退任したので答えられない」といった不誠実な対応を繰り返していました。

「公的な第三者が入らなければ真実はわからない」と考えるのは遺族として当然であろうと思いますし、民事裁判にかけて事を明らかにしようとするのであれば相応の損害賠償請求が必要です。(低額ではお金払ってオシマイということが懸念されるため)

ここまでわかっている事実としましては、下記のようなことが挙げられています。

・地震が起こった際、バスは1回目の送迎を終えて園庭で待機していた。

・園庭に避難したが、園長は「園児が不安と寒さにおびえていたので一刻も早く親元へ帰そう」と判断した。

・バスはもう1台あったが、ラジオで津波警報を聞いてすぐ引き返して無事だった。

・園長は津波警報を聞き、バスに引き返すよう伝えるために職員を走らせた。→その時バスは幼稚園から会談を下ったところにある小学校付近に停車中。

・バスは指示を受けて、児童を乗せたまま引き返した。しかし、渋滞に巻き込まれるなどして間に合わなかった。

・指示を伝達した職員は、階段を上がって無事に幼稚園に戻った。

・幼稚園の防災マニュアルでは「大きな地震の際にはお迎えまで園内待機」となっていたが、マニュアルの存在は園長のみしか知らず、職員に周知してはいなかった。

・幼稚園そのものは海から1qほど離れた高台にあって、津波の被害は受けていない。

・バスの運転手は「私も石巻の海の近くに住んでっから、津波が来るかもしれないのにバスをなんで出すのかって思った。けど、幼稚園に『お願いします』って言われたら、まずは仕事をこなさないとって」と話している。

・運転手は少し意識を失ったものの無事で、事故後に幼稚園に戻って園長に報告している。

・園長は報告を聞いて現場の様子を見に行くも、「頭が真っ白になった」と言って救助や捜索依頼はしていない。

・事故直後の家族からの問い合わせに園長は「わからない」の一点張りで、報告を受けているはずの事故現場を教えていない。

・当該児童であるかは不明だが、事故現場付近では数時間後に子どもの助けを呼ぶ声が確認されている。(10時間後に火災が起こり、炎上したバスから死体が発見されているが、死因は不明)



これだけのことでも、幼稚園側の判断や対応は責任や過失を問われるべきものと思います。ましてやまだまだ不明な点がありますし、ほぼ同業者として私も事故の真相を知りたいと思います。

命を預かる身として確実に言えることは、自分の判断から生まれた結果には大きな責任があり、「悪意はない」「良かれと思って」では済まされないということです。
posted by 園長 at 10:56| Comment(8) | TrackBack(0) | 保育関連報道
この記事へのコメント
初めまして。幼稚園児の死亡事故に関して、損害賠償請求訴訟になったと聞きました。原告(亡くなった園児の父母)がネット上でさんざん叩かれているのを読んで、情報を集めました。山本様が記述されている内容とほぼ同じ情報を入手できました。

@幼稚園が高台にあり津波の被害を受けていない。

A同じ園の別の送迎バスの運転手さんがラジオで大津波警報を知り、幼稚園に引き返して乗っていた園児は無事だった。

この2点は重要です。ラジオを聴いていれば容易に大津波警報を知ることができました。高台に避難すれば被害を回避できました。

天災の場合は損害賠償責任を免れるのは「結果予見性」と「結果回避可能性」の双方が無い場合です。

私は裁判で幼稚園が敗訴すると予測します。

多くのマスコミの報道はポイントになる事実を外しています。そのため、報道を見聞きした人達が「天災による被害なのに、損害賠償を請求するなんて非常識。」と考えています。
Posted by MSMUAI at 2011年08月12日 14:48
> MSMUAIさん
コメントありがとうございます。

仰る通りだと思います。ただ、ご遺族の記者会見の映像を見る限り、ご遺族も裁判になってしまったことを残念に感じていらっしゃるようでした。

説明会は3回開催されたようですが、幼稚園側の説明・謝罪が納得できるようなものではなかったことが提訴に至った大きな要因となっているようです。

勝訴・敗訴ではなく、幼稚園側が事故と真摯に向き合い、真実を明らかにすることで、今後につながるような和解が図られることを私は期待しています。
Posted by 園長 at 2011年08月12日 16:38
この件に関して、初めて冷静なご意見を聞けたような気がしました。2チャンネルなどの罵詈雑言、第三者の無責任、勝手言い放題は、人間のクズ共の吹き溜まりの結果として仕方ないものとして無視します。何よりも、亡くなった5人の園児たちのご冥福を祈るとともに、その最期がどうであったのか、知りたいと思うのは間違いでしょうか?せめて少しでも苦しくない最期であってほしい。5歳や6歳の幼い子が、どんな気持ちで命を失っていったのか?考えて、暗澹とならざるにはいられません。彼ら、彼女らは何のために、この世に生を受けたのか、考えざるを得ません。
Posted by runner at 2011年09月30日 00:52
>runnerさん
コメントありがとうございます。

マスコミは、遺族が裁判という手段に訴えなければならなくなったことについて、もう少し掘り下げて報道すべきであったと思います。
Posted by 園長 at 2011年09月30日 15:14
もうすぐ、判決が下るそうです。
震災時に、都内で、幼稚園の保護者会に出席していた者です。
当時、娘は年長、息子は年少で、保護者会中で、預かり保育で同じ園内にいました。
地震の揺れが大きく長く、園では、ラジオを聞き、当時出回り初め、設置されていた地震予告をいち早く知らせる警報器も作動したと記憶しています。
通常時の訓練とは違い、防災頭巾は、誰もかぶりませんでした。
避難は、訓練と同じく、園の庭に集まりました。

何度も、携帯電話のTVや、携帯電話のinternetのnews、
ラジオ放送を聞く、役所への確認等をした後で、一時間ほどしてから、解散して帰宅しました。

その時点ではまだ、揺れが続いており、建物内に居られずに出てきた路上避難者が歩道に立っていました。

携帯電話は不通になり、
自宅には帰らず、実家に行き、
実家の自宅電話に外出中の家族全員から大祖母に無事の知らせが入りましたが、
交通機関が麻痺し、
全員が帰宅できたのは、夜中を過ぎた頃でした。

車にはラジオはついていますし、街頭スピーカーから、非常時の放送はありました(かなり、わけはわからない内容で混乱がわかりました)。

携帯電話は、電話の機能は使えませんでしたが、ワンセグTVや、internetのnewsは見ることができました。

どんなに混乱があったとしても、情報がなかった。
というのは、ある程度の責任がある人間が言って良いとは思えません。

情報を知ってからの判断は、非常時の事なので、どう結果に繋がったかは、一人一人全く違うと思います。
避難しても、家族を心配して捜しに戻って行方が知れないかたもいます。

それでも、高台にある幼稚園で、地震と、津波であるならば、
高台から離れる必要はなかったと思いますし、横転したバスのそばに焼死体が折り重なっていたのもおかしな話です。
連絡のための職員が無事であるなら、渋滞に巻き込まれたとしても徒歩で高台に避難しても間に合ったのでは?等、
あきらかに、「(その時)保護者として避難させる。(預かっている園児と避難する)」意識が欠けていたとしか思えません。
(後に、TVのインタビューに答えた運転手さんの、「仕事だから、園からの命令だから、送ってこよう。津波で危ないと思うけどなぁ?」も、避難の意識の低さが伺える発言だと思います。)
職員が最後に確認したバスの場所も家族に知らせず、家族が自力で見つけた時には、炎上して鎮火した後だったようです。

裁判するしかなかった遺族にどうか謝罪と真実が明かされる日が訪れる事を切に願います。


Posted by ria at 2013年09月17日 09:43
 私もニュースサイトだけの情報で「悲しいのは分るけど、園に責任なすりつけるのって変」って思ってました。

 報道の情報では「園が地震に対してシューティングゲームをクリアする程のベストなプレイを見せなかったから」くらいのニュアンスで伝わってしまいます。

 昨日、ネットで真相を知ってニュースに注目していましたが、

「最大の論点は"園が津波を予知出来たかどうか"」
 としか言わず、まるで園に予知能力がなかったから、気象予報士やレスキュー並の専門性と、冷静さがなかったから損害賠償を求められたとも取れる言い方です。

 被害者家族のレポートも長々とやっていましたが、「かなしい」とか「今生きていれば」とか「園の対応がもう少しよければ」までで、園の対応のまずさなどの具体的な話は一言もなし。これでは逆に悲しい感情だけで責任追及している印象さえ受けてしまう。

 そして、「津波で亡くなった」という言い方もどうなのか。「津波の時は生きていた。その数時間後焼死体で見つかった」と何故言わないのか。

 インターネットが普及して良い世の中になったなぁとは思うのですが、わざわざ誤解を招くようなマスコミの加工って何なんでしょうか?
Posted by at 2013年09月18日 11:20
お二方、コメントありがとうございます。

各報道を見ましたが、問題の本質がきちんと捉えられていないことは残念ですね。

私も裁判記録を詳細に把握しているわけではありませんが、双方の主訴に大きな隔たりがあったのだろうということは、和解交渉が決裂したことから想像できます。

論点は、「津波が予見できたか」「賠償金の金額が妥当か」ではなく、「児童の生命を預かる者として、適切な対応を行うことができたか否か」であると思います。

今後幼稚園側の対応にも注目していきたいと思います。
Posted by 園長 at 2013年09月18日 13:01
結果的には、お金での解決になってしまった印象になった事が残念です。
もう、確かめようもないのかもしれませんが
他にやりようがなかったのか?と、思える場面が多数あり、

園に園児といた時に、安全確認の時間をもう少し長くもうけて、保護者のお迎えまで待機していたらと思えてなりません。

運転手さんの、奥さんも亡くなっていますし、運転手さんが流された時に、どのくらいの距離流されて、どのくらいの時間意識なりを失っていたのかは、
報道ではわかりません。

横転したバスが渋滞時の場所からどの程度流されていたのかも報道ではわかりません。

それでも、高台の幼稚園から徒歩で高台に戻るように連絡のために渋滞で動けないバスまで来た方が徒歩で高台の幼稚園まで戻って助かられていることを考えると、

バスから下ろして徒歩で高台に避難したり
流されていたとしても、
幼稚園の関係者や、運転手さんが、園のバスに園児がまだ乗っていること、流される前にどの辺りにいたか、
それだけでも正直に話をしていたら
結果も、家族の気持ちも違っていたのでは、と思います。

園のバスで園児がシートベルトを着用するのかも、報道ではわかりません。

バスから運転手さんが流されていたのですから、どこかに解放部はあったかもしれませんが、園児が脱出できる状況ではなかったのでしょう。
園児が流されずに全員バスの中にいたのか、すでに溺れていたのか、生きていたのかも、報道ではわかりません。

色々な意味で、何がどう働いて、結果に繋がったのか、家族の気持ちはそれだけだったと思いますが、
園は知らぬ存ぜぬで、小さな命を預かっている意識が欠けていたとしか思えません。

調査のほとんどは、園児の家族がしたものだと聞いています。

今後、このような不幸なことが起こらないように、
非常時は、最善を尽くす意識を持つ為にも、もっときちんとした、検証と報道があるべきだと思いました。

Posted by ria at 2013年09月20日 16:36
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